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足関節捻挫の急性期対応として、テーピングやサポーターのみで様子を見るという選択がとられる場面は少なくない。しかし、損傷した外側靭帯にかかるストレスを角度という指標で考えると、テーピングやサポーターでは制動が不十分となりうる局面がある。
本稿では、外側靭帯の緊張角度に関する知見と、キャスト固定中の関節可動域を実測した研究データをもとに、急性期になぜ固定という選択が必要になるのか、またハードキャストではなくソフトキャストを選択する根拠について整理する。

足関節捻挫で主に損傷を受ける外側靭帯のうち、前距腓靭帯(ATFL)は足関節底屈角度がおよそ16.2度以上になったときに緊張し、踵腓靭帯(CFL)は背屈角度がおよそ17.8度以上で緊張するとの報告がある。
逆に言えば、底背屈がおおむね15度程度の範囲にとどまっている限り、ATFL・CFLはともに緩んだ状態が保たれると考えられる。
急性炎症期(受傷後0〜10日程度)は、断裂した靭帯が生理的な長さを保った状態で瘢痕性修復を開始できる環境を整える必要がある時期であり、この時期に靭帯断裂部へ離開方向のストレスを繰り返しかけないことが、修復過程を妨げないための前提条件になる。

ここで問題になるのが、テーピングやサポーターがこの15度という基準を実際に守れているかという点である。この点について、キャスト固定中の足関節可動域を三次元動作解析で実測した研究がある。
この研究では、固定を全く行わないコントロール群の自動運動時最大底背屈可動域は42.1°/25.5°、歩行時でも18.5°/16.5°であった。テーピングやサポーターは、キャストのような硬化した外殻構造を持たず、伸縮性のある素材で関節運動をある程度許容する設計であることから、その制動力はキャスト固定よりもコントロール群(無固定)の可動域に近くなることが推測される。
なお、この点については重要な留意事項がある。今回参照する研究でテーピングやサポーターそのものの可動域が直接測定されているわけではなく、あくまで無固定群のデータからの推論である。
しかし、無固定群の可動域がすでに15度を大きく超えている以上、固定方法や素材特性により変わる可能性はあるが、テーピング・サポーターのみで15度以内を担保することは、困難であると考えるのが妥当である。
したがって、急性期においては、テーピングやサポーターではなく、より制動力の高い固定材を用いる必要があると考えられる。

制動力という一点だけを見れば、硬化した外殻を持つハードキャストが最も確実に可動域を制限できる。しかし、一般的なギプス固定には、拘縮、血行不全、筋萎縮、足底感覚入力の低下といったリスクが懸念されてきた。
特に足底の感覚入力が低下することは、歩行時のバランス制御や再受傷予防の観点からも軽視できない要素であり、歩行そのものの感覚も低下することが推察される。急性期の一定期間とはいえ、制動力とこうした副次的なリスクは、両立させる形で設計されるべきものである。

この課題に対する当院の選択が、ソフトキャストによる固定である。硬化後も一定の柔軟性を保つソフトキャストは、患部の安静を図りながらも足底部が柔らかく、足底感覚や歩行感覚を維持しやすいという特性を持つ。
問題は、この特性を持ちながら、実際に底背屈15度以内という基準を担保できているかという点であり、これについては実測データが根拠となる。
| 条件 | 最大底屈角度 | 最大背屈角度 |
|---|---|---|
| ソフトキャスト固定・歩行時 | 11.0° | 12.6° |
| ソフトキャスト固定・自動運動時 | 24.7° | 11.0° |
歩行時の可動域については、ソフトキャスト固定下で底屈11.0°・背屈12.6°と、いずれも15度以内に収まっており、日常的な歩行動作においては靭帯への離開ストレスを回避できる範囲に制動されているといえる。
また、この歩行時可動域についてはハードキャストとの間に有意差が認められておらず、歩行を目的とする限りにおいてはソフトキャストでも十分な制動が得られている。
一方で、患者が自力で足関節を大きく底屈させる自動運動においては、ソフトキャスト固定下でも底屈角度は24.7°に達し、15度の基準を超える。この点は、ソフトキャストが万能ではないことを示す重要なデータである。
つまり、ソフトキャストは「歩行という日常動作の範囲では」15度以下を担保できるが、「意図的に足関節を動かそうとする自動運動」まではカバーしきれない。ここに、固定材の選択だけでなく、患者への動作指導(急性期には自力で足首を大きく動かさないこと)を併せて行う必要性の根拠がある。

足関節捻挫の急性期対応において、テーピングやサポーターのみでは、外側靭帯の緊張角度である15度という基準を制動しきれない可能性が高く、急性期には固定という選択が必要になると当院では考えている。
一方で、制動力を優先してハードキャストを選択すると、足底感覚や歩行感覚の低下という別のリスクを抱えることになる。当院がソフトキャストを採用しているのは、歩行時の底背屈可動域を15度以内に制動しながら、足底感覚を維持できるという、両者のバランスを取るためである。
ただし、ソフトキャスト固定下であっても自動底屈運動では15度を超えるため、固定材の選択と合わせて、急性期には自力で足関節を大きく動かさないという患者指導を行うことが不可欠である。この一連の判断の根拠となっているのが、キャスト固定中の関節可動域を実測した研究データである。
本稿は特定の研究データおよび機能解剖学的知見に基づく臨床的考察であり、個々の症例における適応は損傷の程度・部位・患者背景により異なる。実際の固定方法の判断は、担当する柔道整復師による直接の評価に基づいて行われるべきである。

”骨粗鬆症”(こつそしょうしょう)は、骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、骨密度および骨質が低下することで骨がもろくなり、軽微な外力でも骨折を起こしやすくなる病態です。
高齢者や閉経後の女性に多く見られる一方、運動不足や栄養摂取の偏りが背景にある場合、若年層でも同様の骨代謝の乱れが生じることがあります。
当院では、単に「年齢のせい」として片付けるのではなく、なぜその骨がもろくなっているのか、骨代謝のどの段階に問題があるのかを見据えた上で、栄養面を含めたアドバイスを行なっています。

骨粗鬆症そのもの(骨密度・骨質の評価)は、整形外科の専門的な検査によって行われるものであり、超音波画像検査(エコー)で骨密度そのものを評価することはできません。この点は当院としても明確にお伝えしています。
一方で、エコーが臨床上有用なのは、骨折の評価においてです。
骨折が疑われる部位では、骨皮質の連続性の途絶や骨膜反応の有無、周辺軟部組織の腫脹・血腫の状態をエコーで観察し、問診・視診・触診・各種徒手検査の結果と合わせて総合的に判断します。
骨粗鬆症の既往がある方は、軽微な受傷機転であっても骨折を疑う閾値を下げて評価することが臨床上重要だと考えています。

骨は、破骨細胞による吸収と骨芽細胞による形成という2つのプロセスが常に繰り返される動的な組織です。
加齢や運動不足、ホルモンバランスの変化(特にエストロゲン低下)、栄養不足が続くと、この骨代謝回転(リモデリング)のバランスが吸収優位に傾き、骨梁構造が疎になっていきます。
この過程は自覚症状に乏しく進行するため、栄養面からのアプローチが予防・維持において重要な意味を持つと考えられています。

骨代謝を良好な方向に維持するためには、以下の栄養素を意識的に摂取することが重要です。ここで示す摂取量は年齢・性別・身体状況によって個人差が大きいため、目安としてご参照ください。
骨の主成分を構成する中心的なミネラルです。摂取不足が続くと、血中カルシウム濃度を維持するために骨からカルシウムが動員され、骨密度低下につながります。
腸管でのカルシウム吸収を促進する脂溶性ビタミンで、骨形成にも関与します。皮膚が紫外線を受けることで体内合成される点も特徴です。
骨基質タンパクであるオステオカルシンを活性化し、カルシウムを骨に定着させる働きに関与するとされています。
骨の結晶構造の一部を構成するとともに、カルシウム代謝やビタミンDの活性化にも関与するミネラルです。
骨基質(コラーゲンを中心とした有機成分)の土台を構成する栄養素です。高齢者は食が細くなることでタンパク質摂取量が不足しやすく、骨基質・筋肉量双方の観点から注意が必要です。

栄養素を意識的に摂取していても、以下のような習慣が続くと骨の健康を損なう可能性があります。
当院では、骨粗鬆症そのものの判断は行っておりません。しかし、骨折が生じている可能性についてはエコーをはじめ、問診や視診、触診と合わせて総合的に判断した上で施術方針を組み立てています。
また、再骨折の予防という観点から、日常的な栄養状態についてのアドバイスも行っています。最近つまずきやすくなった方、骨折を繰り返している方は一度ご相談ください。
”骨粗鬆症”の予防・改善には、骨代謝を支える栄養素を意識的に取り入れることが欠かせません。
カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、マグネシウム、タンパク質をバランスよく摂取するとともに、過剰な塩分・糖分の摂取や極端な食事制限を避けることが、骨の健康維持につながります。
骨密度そのものの評価は、整形外科など病院での検査が前提となりますが、骨折が疑われる場合には、エコーによる評価が有用な選択肢の一つとなります。
じゅん整骨院では、急性外傷から骨粗鬆症を背景とした骨折まで、エコーによる病態把握を軸に幅広く対応しています。骨の健康が気になる方は、ぜひ一度ご来院ください。
2026年6月9日(火)および6月16日(火)の2日間、ダイヤ工業株式会社(岡山県岡山市南区)と岡山県立岡山南高等学校との産学連携特別授業に、じゅん整骨院院長として特別講師を務めさせていただきました。会場はダイヤ工業株式会社本社オフィスです。
同校との連携授業は本年で7年目とのことで、これまでは「モノづくり」をテーマとした授業が中心だったそうです。今回はその発展形として、地元・岡山で活動する柔道整復師を特別講師に迎える形式が新たに実現し、私にお声がけをいただきました。
ダイヤ工業株式会社は、全国の施術現場や柔道整復師との連携ネットワークを有しており、そのネットワークを活かして学校教育の場と柔道整復師の現場をつなぐ橋渡し役を担いたいというご趣旨で、今回の企画をお声がけいただきました。私自身、公益社団法人岡山県柔道整復師会に所属する立場としても、この趣旨に賛同し、登壇させていただいた次第です。
柔道整復師という国家資格について、整形外科や整体院との違いを含めてご説明し、実際の患者事例を交えながら仕事内容を解説しました。
あわせて、当院で日常的に使用している超音波画像観察装置(エコー)を用い、生徒さん自身の足関節などをその場で観察していただく実習を行いました。
スポーツをする学生さんにとって身近な「ウォーミングアップ」をテーマに、体験型の授業を行いました。
| 実施日 | テーマ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2026年6月9日(火) | 柔道整復師の仕事とは | 柔道整復師の役割解説、エコーを用いた関節観察実習 |
| 2026年6月16日(火) | 正しい身体のケア | ウォーミングアップの実践指導、体験型授業 |
ダイヤ工業株式会社のプレスリリースで紹介されていた感想の一部を、要旨としてご紹介します。
このような声をいただけたことは、私自身にとっても、柔道整復師という仕事の魅力を次世代に伝える意義を改めて実感する機会となりました。
黒川 純(じゅん整骨院 院長)
ダイヤ工業株式会社のプレスリリースでは、今後も学校・現場・地域社会をつなぐ地域連携・教育支援を継続していく方針である旨が述べられています。
本記事の授業日程・登壇背景・生徒さんの声に関する情報は、ダイヤ工業株式会社プレスリリース「【岡山南高校×ダイヤ工業】7年目の「産学連携」授業が進化!メーカーが架け橋となり、高校生へ現場のリアルを伝える特別授業を実施」(PR TIMES、2026年6月24日13時00分配信)に基づいています。
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000516.000060537.html