Blog記事一覧 > 原因不明,放散痛,整形外科,機能改善,物理療法,病態把握,痛み,痛みの原因,神経痛,筋肉,組織修復,膝の痛み,膝痛い,解剖,鑑別,間違った常識,骨折 > 腓骨近位部痛と疲労骨折鑑別|総腓骨神経滑走障害が示唆された高校生症例|岡山市・じゅん整骨院

腓骨近位部周辺の疼痛は、スポーツ活動を行う成長期の選手において比較的遭遇する機会の多い症状です。
その一方で、疼痛部位が限定されているにもかかわらず、実際の病態が局所組織とは異なる場所に存在するケースも少なくありません。
特に腓骨近位部周辺は、大腿二頭筋腱、外側側副靭帯、近位脛腓関節、総腓骨神経など複数の組織が密接に存在する解剖学的特徴を有しており、単純に「痛い場所」だけを評価すると病態を見誤る可能性があります。
本症例は、他院にて疲労骨折の可能性を示唆された高校生女子の腓骨近位部痛に対し、神経の滑走性評価を実施した結果、総腓骨神経の関与が示唆された症例です。

高校生女子。
腓骨近位部周辺の疼痛を主訴として来院しました。
明らかな受傷機転は認めず、歩行時痛を有していました。
競技活動は継続できていたものの、走行時にも疼痛を認めていました。
他院では疲労骨折の可能性を指摘されていました。

腓骨近位部痛を呈する病態は多岐にわたります。
| 病態 | 主な特徴 |
|---|---|
| 腓骨疲労骨折 | 骨性圧痛、運動時痛、骨ストレスで疼痛増悪 |
| 近位脛腓関節障害 | 関節周囲痛、荷重時痛 |
| 大腿二頭筋遠位腱障害 | 腱付着部圧痛、抵抗運動痛 |
| 外側側副靭帯障害 | 外反ストレスで疼痛誘発 |
| 総腓骨神経障害 | 神経伸張による症状再現 |
疼痛部位だけを見ると腓骨疲労骨折を疑うことは不自然ではありません。
しかし本症例では、腓骨近位部に明瞭な圧痛を認めず、腓骨へのストレス負荷や介達痛によっても症状は再現されませんでした。
そのため、骨性病変だけで説明できる所見とは言い難い状況でした。

本症例において特徴的だったのは、大腿二頭筋遠位部の圧痛と神経伸張テストによる症状再現でした。
総腓骨神経は坐骨神経から分岐した後、大腿二頭筋深層を走行しながら膝外側へ向かいます。その後、腓骨頭後方を回り込み、浅腓骨神経と深腓骨神経へ分岐します。
つまり総腓骨神経は、今回圧痛を認めた大腿二頭筋遠位部と解剖学的に非常に近接した位置を走行しています。さらに腓骨頭周辺では神経が比較的表層を走行するため、機械的ストレスの影響を受けやすい特徴があります。
神経組織は筋や靭帯と同様に身体の動きに合わせて滑走しています。この滑走性が低下すると、神経組織そのものに過剰な張力や圧縮ストレスが加わり、疼痛の発生要因となる場合があります。

神経系組織は、周囲組織との間で常に移動・伸張・滑走を繰り返しています。そのため神経系由来の疼痛を評価する際には、神経滑走評価が重要となります。
本症例では、坐骨神経および総腓骨神経に対する伸張テストにより主訴が再現されました。
一方で、腓骨そのものへのストレスでは症状再現が認められませんでした。この所見は、疼痛発生に神経系組織が関与している可能性を示唆する材料となりました。
もちろん、神経伸張テストのみで病態を断定することはできません。
しかし、疼痛部位・圧痛部位・神経伸張による症状再現という複数の情報を統合すると、神経系へのアプローチを優先する合理性があると判断しました。

本症例では総腓骨神経を中心とした神経系モビライゼーションを実施しました。
神経モビライゼーションの目的は神経を強く伸ばすことではありません。神経周囲組織との相対的な滑走性を改善し、神経組織へ加わる機械的ストレスを軽減することを目的としています。
また物理療法として立体動態波を併用しました。通電は総腓骨神経走行を考慮しながら実施しました。
今回の介入は、神経系組織への機械的ストレス軽減を目的として選択しています。
| 施術回数 | 経過 |
|---|---|
| 初診時 | 歩行時痛および走行時痛を認める |
| 2回目 | 症状軽減 |
| 3回目 | 歩行時痛・走行時痛ともに消失 |
症状は徐々に軽減し、第3回施術時には歩行時痛および走行時痛ともに消失しました。
競技動作においても症状の再現は認めませんでした。
腓骨近位部痛というと、まず疲労骨折や近位脛腓関節障害を想起することが少なくありません。
しかし本症例では、疼痛部位そのものではなく、神経系組織を評価したことが病態把握の重要な手がかりとなりました。
特に、
という所見は、神経系組織の関与を検討する上で重要な情報であったと考えられます。
スポーツ現場では疼痛部位に意識が集中しやすくなりますが、実際には解剖学的連続性や組織間の関連性を考慮した評価が必要になる場合があります。
本症例は、腓骨近位部痛に対する鑑別評価において、神経力学的視点の重要性を再認識した症例でした。