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ランニングを継続している方の足の痛みでは、「足底筋膜炎」「アキレス腱周囲の障害」「後脛骨筋腱の障害」などがよく知られています。一方で、足の内側から土踏まずにかけて痛みやしびれが生じ、走っていると症状が強くなる場合には、神経の絞扼を考える必要があります。
その代表的な病態の一つが、Jogger’s Foot(ジョガーズフット)です。
Jogger’s Footは、一般的な「ランナーの足の痛み」を意味する言葉ではありません。主として内側足底神経(medial plantar nerve)の絞扼・刺激に関連する病態を指します。
内側足底神経は脛骨神経から分岐し、足部内側から足底へ走行する神経です。ランニングに伴う反復負荷、足部の回内・外反、局所の圧迫などが神経への機械的ストレスに関与すると考えられています。
1978年に報告された症例報告では、長距離走者に生じる内側足底神経の障害としてJogger’s Footが記載され、縦アーチ部の疼痛や足底の感覚異常などが報告されています。現在もランナーにおける末梢神経障害の一つとして扱われています。
重要なのは、「足の内側が痛い」という症状だけでJogger’s Footと判断しないことです。同じ領域に症状を生じる足底腱膜、後脛骨筋腱、長母趾屈筋腱、足根管内の脛骨神経、骨・関節などの状態を鑑別しながら、症状の発生機序を整理する必要があります。

Jogger’s Footを考えるうえで重要なのが、単純な「使いすぎ」ではなく、走行中に神経へどのような機械的ストレスが繰り返し加わっているのかという視点です。
内側足底神経は、足関節内側から足部へ向かって走行し、舟状骨結節付近では母趾外転筋の深部を通過します。また、長母趾屈筋腱と長趾屈筋腱が交差するいわゆるKnot of Henry周辺も、内側足底神経の絞扼部位として報告されています。
ランニングでは、接地から荷重、足部の回内、蹴り出しまで、足部に連続した運動が発生します。足部のアライメントや筋活動、シューズによる局所的な圧迫などが組み合わさることで、神経に反復的な圧迫・牽引ストレスが加わる可能性があります。
これらは単独で原因になるとは限らず、複数の要因が重なることで症状が出現する可能性があります。特にシューズやインソールについては、アーチを支持することが常に有利とは限らず、局所的な圧迫を増加させる場合もあるため、症状の部位と荷重状態を合わせて評価することが重要です。

Jogger’s Footでは、足の内側から土踏まずに沿って疼痛や灼熱感、しびれなどが生じることがあります。症状が足底の母趾側へ放散することもあり、ランニングや靴による圧迫によって症状が増悪するケースが報告されています。
ここで重要なのが、「痛みの場所」だけでは足底腱膜炎との区別ができないという点です。
足底腱膜炎では踵骨内側結節付近の疼痛が主体となることが多い一方、Jogger’s Footでは内側縦アーチに沿った神経性の疼痛や感覚異常が手掛かりになります。また、足根管症候群では脛骨神経そのものが足関節内側で絞扼されるため、症状の範囲や誘発部位が異なる場合があります。
したがって、「土踏まずが痛い=足底腱膜炎」と単純化するのではなく、疼痛の性状、放散方向、感覚異常、圧痛点、誘発動作、足部アライメントを組み合わせて考える必要があります。

じゅん整骨院では、症状の名称を先に決めるのではなく、まず「どの組織に、どのようなストレスが加わっているのか」を整理することを重視しています。
問診では、症状が出始めた時期だけではなく、走行距離、走行頻度、ペース、路面、シューズの変更、インソールの使用状況などを確認します。
さらに、痛みが走行開始直後から出るのか、一定距離を走った後に出るのか、走行終了後に残るのかによっても、負荷との関連性を考える材料になります。
触診では、舟状骨結節周囲、母趾外転筋周辺、内側縦アーチ、足底腱膜、後脛骨筋腱、長母趾屈筋腱などを確認します。必要に応じて神経走行上の圧痛やTinel様の誘発所見についても確認します。Jogger’s Footでは舟状骨結節付近の内側足底神経走行部で症状が誘発されることが報告されています。
超音波画像観察では、症状の部位だけを確認するのではなく、周辺組織を含めて構造を確認します。
末梢神経の超音波観察では、神経の連続性や形態、周囲組織との関係を確認することができます。また、神経周囲の腱鞘炎、滑液包の変化、占拠性病変など、症状の背景となる軟部組織の異常を確認する補助的な情報源にもなります。
ただし、Jogger’s Footは臨床症状と身体所見による評価が重要であり、エコー画像だけで病態を確定できるものではありません。画像所見は問診・触診・徒手検査などと統合して解釈する必要があります。
Jogger’s Footを考える際には、「神経が悪い」という一点だけを見るのでは不十分です。
例えば、内側縦アーチの荷重変化、母趾外転筋の緊張、後足部のアライメント、足部内在筋の活動などが、神経周囲の力学的環境に影響している可能性があります。
そのため、局所の圧痛だけではなく、立位・片脚立位・踵上げ動作などにおける足部の挙動も確認し、症状がどの動作で再現されるのかを整理します。

Jogger’s Footが疑われる場合、施術の中心的な考え方は、症状を呈している神経周囲への機械的ストレスを評価し、そのストレスを減らすことです。
まず、ランニング量や症状を誘発する動作を調整します。これは単純な長期休止ではなく、症状の程度に応じて負荷を相対的に調整し、神経への刺激が過剰にならない範囲を設定するという考え方です。
また、足部のアライメントや筋緊張を確認したうえで、必要に応じて手技やテーピングなどを組み合わせます。

微弱電流、立体動態波、超音波、ハイボルテージなどの物理療法を用いる場合もありますが、これらをJogger’s Footそのものに対する特異的な施術として位置付けることは適切ではありません。
物理療法は、疼痛の程度や局所組織の状態、施術時の反応などを踏まえ、運動負荷を調整するための補助的手段として選択します。
例えば、疼痛が強く運動評価そのものが難しい場合には、まず症状の程度を把握しながら物理療法を選択し、その後に足部の運動評価や荷重動作の確認へ移行するという考え方があります。
なお、Jogger’s Footに対する特定の物理療法機器について、疾患特異的な有効性を十分に示した研究は限定的です。そのため、機器そのものを主役にするのではなく、病態評価を起点として施術手段を選択することが重要です。

神経に対する圧迫や牽引が反復すると、神経内の微小循環や神経周囲組織に影響し、感覚異常や疼痛などの神経症状につながる可能性があります。
Jogger’s Footでは、単純な筋肉痛とは異なり、症状の性質そのものが異なることがあります。特に「焼けるような痛み」「ピリピリする」「しびれる」「一定距離を走ると出てくる」といった情報は、神経性疼痛を考えるうえで重要です。
一方で、神経障害が疑われるからといって、すべての症状が神経そのものの損傷を意味するわけではありません。圧迫部位、圧迫時間、機械的負荷、周囲組織の状態などを総合して評価する必要があります。

神経や筋・腱などの組織が良好な状態を維持するためには、局所の力学的環境だけではなく、エネルギー摂取、タンパク質、各種ビタミン・ミネラルなどを含む全身的な栄養状態も無視できません。
特にランナーでは、走行量に対してエネルギー摂取が不足すると、身体組織の維持や運動後の回復に必要なエネルギーが不足する可能性があります。
タンパク質は筋・腱などの組織を構成する主要な栄養素であり、ビタミンC、鉄、ビタミンB群なども正常な代謝に関与します。ただし、これらを多く摂取すればJogger’s Footの症状が改善するという根拠があるわけではありません。
したがって、分子栄養学的な視点では「特定のサプリメントを摂ればよい」と考えるのではなく、食事量、運動量、体重変化、疲労、睡眠などを含めて、栄養状態に明らかな問題がないかを確認することが基本となります。

Jogger’s Footが疑われる場合、シューズやインソールだけを変更して終わるのではなく、ランニングそのものの負荷を見直す必要があります。
特に重要なのは、「走れるか、走れないか」という二択ではなく、どの程度の負荷なら症状を増悪させずに実施できるのかを把握することです。

Jogger’s Footの経過を確認する際には、痛みの強さだけを記録するのではなく、症状が出現するまでの走行時間、症状が消失するまでの時間、しびれの範囲、圧痛部位、片脚立位や踵上げなどの動作所見を継続的に確認します。
これらを記録することで、「痛みが少なくなった」という主観的変化だけではなく、運動負荷に対する反応がどのように変化しているのかを確認できます。
また、症状が長期間持続する場合、感覚障害が明確になる場合、筋力低下や筋萎縮が疑われる場合、外傷や占拠性病変など別の病態が疑われる場合には、必要に応じて医療機関での追加評価を検討する必要があります。末梢神経障害ではMRIなどが病態の追加評価に用いられる場合があります。

ランナーの足の内側の痛みは、単純な筋疲労として処理できるとは限りません。足底腱膜、腱、筋、骨・関節、末梢神経など、同じ領域に複数の組織が存在しているためです。
Jogger’s Footを考える場合には、特に内側足底神経の走行と、舟状骨結節周囲から母趾外転筋深部にかけての解剖学的関係を意識することが重要です。
そして、エコー観察だけで結論を出すのではなく、問診、視診、触診、徒手検査、動作評価、必要に応じた医療機関での画像検査などを組み合わせて、症状と構造の関係を整理していきます。
じゅん整骨院では、足部の痛みを「痛い場所」だけで判断するのではなく、どの組織が症状に関与している可能性があるのかを整理し、その仮説に基づいて施術内容や運動負荷を検討しています。
Jogger’s Foot(ジョガーズフット)は、ランナーに生じる足部症状のうち、主として内側足底神経の絞扼・刺激に関連する病態です。
足の内側や土踏まずの痛み、灼熱感、しびれなどがランニングによって誘発される場合には、足底腱膜炎などの一般的な足部疾患だけでなく、末梢神経の関与も鑑別に含める必要があります。
そのためには、症状の部位だけを見るのではなく、神経の走行、舟状骨周囲の解剖、母趾外転筋、足部アライメント、ランニング時の荷重などを総合的に評価することが重要です。
エコーは軟部組織や神経周囲の状態を確認するための補助的な情報を提供できますが、Jogger’s Footの判断をエコー画像だけに依存することはできません。問診・触診・徒手検査・動作評価などと組み合わせることで、より具体的な病態仮説を構築できます。
ランニングを継続しながら機能改善を目指す場合には、局所への施術だけではなく、走行量、シューズ、足部の動き、筋機能などを含めた負荷管理が重要になります。