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仙腸関節の痛みと中殿皮神経障害の鑑別|エコーと徒手検査

2026.11.04 | Category: ぎっくり腰,ぎっくり腰とは,ぎっくり腰原因,ぎっくり腰治療,しびれ,仙腸関節,原因不明,整形外科,栄養,歪み,画像検査,病態把握,痛み,痛みの原因,痺れ,神経痛,組織修復,腰痛,腰痛原因,腰痛症状,解剖,鑑別,間違った常識

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「仙腸関節の痛み」と言われたのに、良くならない

仙腸関節

仙腸関節は、骨盤の後ろ側で仙骨と腸骨をつなぐ関節です。動きはわずかですが、上半身の重さを下肢へ伝え、地面からの力を受け止める役割を担っています。

腰痛のうち仙腸関節が痛みの原因となっている割合は、研究によって幅がありますが、多くの研究ではおよそ25%前後と推定されています(Simopoulos ら, 2012, Pain Physician)。

一方で、「仙腸関節の痛み」への施術を続けているのに、なかなか変化がないという方もいます。お尻の上、骨盤の骨の出っ張り(上後腸骨棘)の下あたりは、仙腸関節のほかに、皮膚の感覚を担う神経(中殿皮神経)が通る場所でもあります。この神経が靭帯の下で締めつけられることで、仙腸関節の痛みとよく似た症状が出ることが報告されています(Aota, 2016, World J Orthop)。

本記事では、岡山市南区西市のじゅん整骨院で行っている、仙腸関節の痛みと中殿皮神経障害の鑑別の考え方を、【所見】→【仮説】→【介入根拠】→【予後管理】の順に整理します。

仙腸関節の基本的な役割と痛みの原因については仙腸関節痛の病態と施術|エコー評価と組織修復の臨床戦略もあわせてご覧ください。

【所見】病態把握:何を確認し、何と区別するのか

最初に確認すること:医療機関の受診が必要なサインの有無

お尻の上の痛みでも、医療機関での検査が必要な病態が隠れていることがあります。次のような場合は、整形外科などの医療機関をご紹介します。

  • 朝のこわばりが長く続く、安静にしていても痛む(炎症性の病気の可能性)
  • 発熱を伴う
  • 高齢の方や骨粗鬆症のある方で、転倒の後や、きっかけがないのに強く痛む(仙骨の骨折の可能性)
  • 脚のしびれや筋力低下が進む、排尿・排便の異常がある

問診・視診・触診

  • 痛みのきっかけ:尻もち、片脚での着地、重い物を持ち上げた、出産後、などの経緯
  • 痛む場所の指し方:痛む場所を指1本で示していただきます。上後腸骨棘のすぐ内側下方を指す場合は、仙腸関節由来の痛みを考える手がかりになるとされています(Fortin ら, 1997, Am J Orthop)
  • 痛む動作:寝返り、立ち上がり、片脚立ち、階段、長く座ったとき
  • 圧痛:仙腸関節の上、上後腸骨棘の下縁、長後仙腸靭帯の外側縁、腸骨稜の上の圧痛の位置と、押したときに普段の痛みや脚への響きが再現されるか

徒手検査

仙腸関節に負荷をかけて普段の痛みが再現されるかを確認する誘発テストを組み合わせて行います。代表的なものに、離開テスト、大腿スラストテスト、圧迫テスト、仙骨スラストテストがあります。4つのうち2つ以上で痛みが再現された場合に仙腸関節の痛みの可能性を考える方法では、感度88%、特異度78%と報告されています(Laslett ら, 2005, Man Ther)。

ただし、こうした検査の組み合わせを集めたメタ分析では、検査が陽性であっても仙腸関節が原因である確率は大きくは上がらず、陰性の場合に仙腸関節を候補から外す判断に役立つとされています(JOSPT, 2021)。当院では、誘発テストの結果だけで判断せず、圧痛の位置、神経学的検査(筋力・感覚・反射)、エコー所見と合わせて総合的に判断しています。

エコー(超音波画像観察装置)で観察する構造

超音波画像検査 エコー

観察する構造 確認する点 臨床的な意味
仙腸関節の後面 関節の隙間の左右差、関節周囲の像、プローブで押したときの痛みの再現 関節由来の痛みの可能性の評価
長後仙腸靭帯 靭帯の厚みの左右差、靭帯の外側縁でのプローブ圧迫による痛みの再現 靭帯の状態と、靭帯の下を通る神経の関与の評価
中殿皮神経の走行部位 上後腸骨棘の下方での神経の位置と周囲組織の滑走、圧迫時の症状の再現 神経由来の痛みの可能性の評価。神経が細いため描出できない場合がある
多裂筋・大殿筋の筋膜 筋の厚みの左右差、筋膜の層の状態 筋・筋膜由来の痛みとの区別
腸骨稜の上縁 胸腰筋膜が付着する部位の状態 上殿皮神経の関与の評価

一方で、仙腸関節の内部や椎間板、神経根などの深部の構造は、エコーでは十分に評価できません。

【仮説】痛みが長引く・繰り返す背景要因

岡山市南区 じゅん整骨院 上臀皮神経

1. 仙腸関節と神経の痛みが区別されていない

中殿皮神経は、仙骨の孔から出てお尻の皮膚の感覚を担う細い神経です。上後腸骨棘の下方で長後仙腸靭帯の下を通り、ここで締めつけられることがあります。報告された症例では、上後腸骨棘の下縁から約1.5cm下方、長後仙腸靭帯の外側縁に強い圧痛があり、仙腸関節の痛みとして扱われる可能性があると指摘されています(Aota, 2016)。

ご遺体を用いた解剖研究では、確認された中殿皮神経の枝64本のうち10本(16%)が長後仙腸靭帯を貫いており、そのうち4本で靭帯の下での明らかな狭窄がみられたと報告されています(Konno ら, 2017, J Pain Res)。痛む場所が同じでも関節と神経では対応が異なるため、区別しないまま施術を続けると経過が変わらない可能性があります。

2. 腸骨稜の上を通る上殿皮神経の関与

腰の下部からお尻の上にかけての痛みには、腸骨稜の上で胸腰筋膜を貫く上殿皮神経の障害が関わることも報告されています。ある施設では、腰痛や下肢の症状を主訴とする患者さんの12%が上殿皮神経障害であったとされています(Aota, 2016 による Kuniya らの報告の引用)。

3. 仙腸関節への負荷のかかり方

仙腸関節の痛みは、外傷、妊娠・出産、腰の手術歴などと関連し、ほかの腰痛と比べて特定のきっかけを伴うことが多いとされています(Cohen ら, 2013, Expert Rev Neurother)。片側に体重を偏らせる姿勢や、片脚での着地・踏み込みを繰り返す動作も、関節への負荷を偏らせる要因と考えられます。

4. 骨盤周囲の筋の働きと神経への負担

当院では、大殿筋や中殿筋の筋出力が低下していると、立つ・歩く・片脚で支えるといった動作で骨盤の安定性が保ちにくくなり、仙腸関節やその周囲の靭帯、靭帯の下を通る神経への負担が増える可能性を考えています。これは解剖学的・運動学的な知見から導いた当院の臨床仮説です。

【介入根拠】施術の選択とその理由

施術内容は、評価で推定した痛みの出どころに合わせて選択します。いずれの方法も単独で回復を保証するものではなく、負荷の調整と組み合わせて用います。

仙腸関節の関与が大きいと考えられる場合

  • 負荷の調整:痛みが強くなる動作(片脚立ち、段差の昇降、長時間の座位など)を確認し、日常生活での動き方を具体的にお伝えします
  • 手技:関節の動きと周囲の筋の緊張を確認しながら、痛みの出ない範囲で行います
  • 骨盤ベルト・テーピング:骨盤の安定を補い、日常動作を続けやすくする目的で用いることがあります
  • 運動療法:大殿筋・中殿筋・体幹の筋の運動を段階的に行います

中殿皮神経・上殿皮神経の関与が疑われる場合

  • 神経の滑走性に着目した手技:長後仙腸靭帯の外側縁や腸骨稜の上など、神経の通り道の周囲組織に対して、神経が動きやすくなるよう手技を行います
  • 強い圧迫を避ける:神経が締めつけられている部位を強く押す・揉むことは、症状を強めることがあるため避けます

物理療法

物理療法

機器 用いる目的
ハイボルテージ 痛みの強い時期の疼痛管理
立体動態波 深部の痛みと筋の緊張への対応
超音波 靭帯など、コラーゲンの多い組織の柔軟性への対応
微弱電流(エレサス) 損傷が疑われる組織周囲への通電

物理療法の効果については、研究結果が一貫していないものも含まれます。機器ごとの選び方は物理療法の使い分けを解説した記事で整理しています。

付加価値:靭帯と周囲組織の回復に関わる栄養

分子栄養学 食事

仙腸関節を支える靭帯は、コラーゲンを主成分とする組織です。分子栄養学の観点からは、次の栄養素がその修復に関わるとされています。

栄養素 関与するとされる働き 不足した場合に考えられること
たんぱく質 靭帯・筋(コラーゲン)の材料 修復材料の不足
ビタミンC コラーゲン合成に必要な補因子 コラーゲン合成の低下
鉄 酸素運搬、コラーゲン合成に関わる酵素の補因子 組織への酸素供給の低下につながる可能性
ビタミンB群 神経の働きやエネルギー代謝に関わる 神経機能やエネルギー産生への影響

特定の栄養素の摂取で痛みが改善すると断定できるものではなく、回復の土台を整える目的で位置づけています。

【予後管理】臨床的結論

お尻の上、上後腸骨棘の下あたりの痛みは、仙腸関節だけでなく、長後仙腸靭帯の下を通る中殿皮神経や、腸骨稜の上を通る上殿皮神経が関わっていることがあります。経過を左右するのは、「仙腸関節の痛み」とひとまとめにせず、痛みの出どころを分けて考えたうえで施術を選ぶことです。

  • 再評価:圧痛の位置、誘発テスト、痛む動作の変化を定期的に確認し、関節と神経のどちらへの対応を中心にするかを見直します
  • 回復の目安:寝返り、立ち上がり、片脚立ち、長時間の座位が、痛みの増悪なく行えることを段階的に確認します
  • 再発予防:大殿筋・中殿筋の筋出力と、片脚で支える動作の安定性を継続して確認します
  • 医療機関への紹介:炎症性の病気や骨折が疑われる場合、神経症状が進む場合、経過が想定と異なる場合は、整形外科などの医療機関をご紹介します

参考文献

  • Aota Y. Entrapment of middle cluneal nerves as an unknown cause of low back pain. World J Orthop. 2016;7(3):167-170. doi:10.5312/wjo.v7.i3.167
  • Konno T, et al. Anatomical study of middle cluneal nerve entrapment. J Pain Res. 2017;10:1431-1435. PMID:28652809
  • Laslett M, et al. Diagnosis of sacroiliac joint pain: validity of individual provocation tests and composites of tests. Man Ther. 2005;10(3):207-18.
  • Simopoulos TT, et al. A systematic evaluation of prevalence and diagnostic accuracy of sacroiliac joint interventions. Pain Physician. 2012;15(3):E305-44. PMID:22622915
  • Fortin JD, Falco FJ. The Fortin finger test: an indicator of sacroiliac pain. Am J Orthop. 1997;26(7):477-80. PMID:9247654
  • Diagnostic accuracy of clusters of pain provocation tests for detecting sacroiliac joint pain: systematic review with meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2021;51(9):422-431.
  • Cohen SP, et al. Sacroiliac joint pain: a comprehensive review of epidemiology, diagnosis and treatment. Expert Rev Neurother. 2013;13(1):99-116.

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