Blog記事一覧 > 11月, 2026 | 岡山市・備前西市駅・南区西市 じゅん整骨院の記事一覧

仙腸関節は、骨盤の後ろ側で仙骨と腸骨をつなぐ関節です。動きはわずかですが、上半身の重さを下肢へ伝え、地面からの力を受け止める役割を担っています。
腰痛のうち仙腸関節が痛みの原因となっている割合は、研究によって幅がありますが、多くの研究ではおよそ25%前後と推定されています(Simopoulos ら, 2012, Pain Physician)。
一方で、「仙腸関節の痛み」への施術を続けているのに、なかなか変化がないという方もいます。お尻の上、骨盤の骨の出っ張り(上後腸骨棘)の下あたりは、仙腸関節のほかに、皮膚の感覚を担う神経(中殿皮神経)が通る場所でもあります。この神経が靭帯の下で締めつけられることで、仙腸関節の痛みとよく似た症状が出ることが報告されています(Aota, 2016, World J Orthop)。
本記事では、岡山市南区西市のじゅん整骨院で行っている、仙腸関節の痛みと中殿皮神経障害の鑑別の考え方を、【所見】→【仮説】→【介入根拠】→【予後管理】の順に整理します。
仙腸関節の基本的な役割と痛みの原因については仙腸関節痛の病態と施術|エコー評価と組織修復の臨床戦略もあわせてご覧ください。
お尻の上の痛みでも、医療機関での検査が必要な病態が隠れていることがあります。次のような場合は、整形外科などの医療機関をご紹介します。
仙腸関節に負荷をかけて普段の痛みが再現されるかを確認する誘発テストを組み合わせて行います。代表的なものに、離開テスト、大腿スラストテスト、圧迫テスト、仙骨スラストテストがあります。4つのうち2つ以上で痛みが再現された場合に仙腸関節の痛みの可能性を考える方法では、感度88%、特異度78%と報告されています(Laslett ら, 2005, Man Ther)。
ただし、こうした検査の組み合わせを集めたメタ分析では、検査が陽性であっても仙腸関節が原因である確率は大きくは上がらず、陰性の場合に仙腸関節を候補から外す判断に役立つとされています(JOSPT, 2021)。当院では、誘発テストの結果だけで判断せず、圧痛の位置、神経学的検査(筋力・感覚・反射)、エコー所見と合わせて総合的に判断しています。

| 観察する構造 | 確認する点 | 臨床的な意味 |
|---|---|---|
| 仙腸関節の後面 | 関節の隙間の左右差、関節周囲の像、プローブで押したときの痛みの再現 | 関節由来の痛みの可能性の評価 |
| 長後仙腸靭帯 | 靭帯の厚みの左右差、靭帯の外側縁でのプローブ圧迫による痛みの再現 | 靭帯の状態と、靭帯の下を通る神経の関与の評価 |
| 中殿皮神経の走行部位 | 上後腸骨棘の下方での神経の位置と周囲組織の滑走、圧迫時の症状の再現 | 神経由来の痛みの可能性の評価。神経が細いため描出できない場合がある |
| 多裂筋・大殿筋の筋膜 | 筋の厚みの左右差、筋膜の層の状態 | 筋・筋膜由来の痛みとの区別 |
| 腸骨稜の上縁 | 胸腰筋膜が付着する部位の状態 | 上殿皮神経の関与の評価 |
一方で、仙腸関節の内部や椎間板、神経根などの深部の構造は、エコーでは十分に評価できません。

中殿皮神経は、仙骨の孔から出てお尻の皮膚の感覚を担う細い神経です。上後腸骨棘の下方で長後仙腸靭帯の下を通り、ここで締めつけられることがあります。報告された症例では、上後腸骨棘の下縁から約1.5cm下方、長後仙腸靭帯の外側縁に強い圧痛があり、仙腸関節の痛みとして扱われる可能性があると指摘されています(Aota, 2016)。
ご遺体を用いた解剖研究では、確認された中殿皮神経の枝64本のうち10本(16%)が長後仙腸靭帯を貫いており、そのうち4本で靭帯の下での明らかな狭窄がみられたと報告されています(Konno ら, 2017, J Pain Res)。痛む場所が同じでも関節と神経では対応が異なるため、区別しないまま施術を続けると経過が変わらない可能性があります。
腰の下部からお尻の上にかけての痛みには、腸骨稜の上で胸腰筋膜を貫く上殿皮神経の障害が関わることも報告されています。ある施設では、腰痛や下肢の症状を主訴とする患者さんの12%が上殿皮神経障害であったとされています(Aota, 2016 による Kuniya らの報告の引用)。
仙腸関節の痛みは、外傷、妊娠・出産、腰の手術歴などと関連し、ほかの腰痛と比べて特定のきっかけを伴うことが多いとされています(Cohen ら, 2013, Expert Rev Neurother)。片側に体重を偏らせる姿勢や、片脚での着地・踏み込みを繰り返す動作も、関節への負荷を偏らせる要因と考えられます。
当院では、大殿筋や中殿筋の筋出力が低下していると、立つ・歩く・片脚で支えるといった動作で骨盤の安定性が保ちにくくなり、仙腸関節やその周囲の靭帯、靭帯の下を通る神経への負担が増える可能性を考えています。これは解剖学的・運動学的な知見から導いた当院の臨床仮説です。
施術内容は、評価で推定した痛みの出どころに合わせて選択します。いずれの方法も単独で回復を保証するものではなく、負荷の調整と組み合わせて用います。

| 機器 | 用いる目的 |
|---|---|
| ハイボルテージ | 痛みの強い時期の疼痛管理 |
| 立体動態波 | 深部の痛みと筋の緊張への対応 |
| 超音波 | 靭帯など、コラーゲンの多い組織の柔軟性への対応 |
| 微弱電流(エレサス) | 損傷が疑われる組織周囲への通電 |
物理療法の効果については、研究結果が一貫していないものも含まれます。機器ごとの選び方は物理療法の使い分けを解説した記事で整理しています。

仙腸関節を支える靭帯は、コラーゲンを主成分とする組織です。分子栄養学の観点からは、次の栄養素がその修復に関わるとされています。
| 栄養素 | 関与するとされる働き | 不足した場合に考えられること |
|---|---|---|
| たんぱく質 | 靭帯・筋(コラーゲン)の材料 | 修復材料の不足 |
| ビタミンC | コラーゲン合成に必要な補因子 | コラーゲン合成の低下 |
| 鉄 | 酸素運搬、コラーゲン合成に関わる酵素の補因子 | 組織への酸素供給の低下につながる可能性 |
| ビタミンB群 | 神経の働きやエネルギー代謝に関わる | 神経機能やエネルギー産生への影響 |
特定の栄養素の摂取で痛みが改善すると断定できるものではなく、回復の土台を整える目的で位置づけています。
お尻の上、上後腸骨棘の下あたりの痛みは、仙腸関節だけでなく、長後仙腸靭帯の下を通る中殿皮神経や、腸骨稜の上を通る上殿皮神経が関わっていることがあります。経過を左右するのは、「仙腸関節の痛み」とひとまとめにせず、痛みの出どころを分けて考えたうえで施術を選ぶことです。
仙腸関節の基本的な役割と痛みの原因については仙腸関節の痛みの原因と対処法で、ぎっくり腰の痛みの発生源の考え方についてはぎっくり腰を繰り返す理由で整理しています。再発予防のための運動プログラムは機能改善プログラムのページ、当院の物理療法機器はこちらからご確認いただけます。